ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症について解説
こんにちは、成城ささもと小児科アレルギー科院長、笹本武明です。
いよいよ東京も梅雨入りしてきましたね。「謎の喉風邪」が世間をにぎわせている今日この頃ですが、一部には「ヒトメタニューモウイルスではないか?」なんて言われますよね。今日はそんなヒトメタニューモウイルス(hMPV)を取り上げてみたいと思います。
ヒトメタニューモウイルスって?
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は2001年にオランダで発見された呼吸器系のウイルスです。
「パラミクソウイルス科」に属しており、RSウイルスの親戚のようなウイルスで、症状も似ていることが特徴的です。
RSウイルスと同様に咳や鼻水、発熱が生じます。
一般的には「咳が長引きやすい風邪」で終わることも多い病気ですが、乳幼児(特に2歳以下)は細気管支炎や肺炎になってしまうこともあり、注意が必要です。
| 【流行時期】 | 日本では3月~6月頃(春先~初夏)に流行しますが、最近は1年間通しての感染も見られます。 |
| 【感染しやすい年齢】 |
乳幼児期に初めて感染し、5歳ごろまでにはほとんどの方が感染するといわれています。 初めての感染は年齢が小さいことも多く、重症化のリスクとなります。 RSウイルスよりは、やや年齢層の高い2歳~4歳頃にかかりやすいウイルスです。 |
| 【再感染】 | hMPVには様々な「型」が存在し、1度かかっても、完全な免疫ができず、繰り返し感染します。 |
| 【潜伏期間】 | 2~5日 |
| 【感染経路】 | 咳やくしゃみ(飛沫感染)、鼻水など体液との接触(接触感染) |
主な症状
▶軽症の場合
- 鼻水
- 咳
- 発熱
- のどの痛み
▶重症化した場合
- ゼーゼー/ヒューヒューした呼吸音(喘鳴)
- 強い咳込みで嘔吐してしまう/眠れない
- 荒い呼吸/胸がべこべこするような呼吸 (呼吸困難・陥没呼吸)
- 水分摂取ができない
- 5日以上続く発熱
※最初は軽症であっても、次第に呼吸が悪くなり気管支炎や肺炎になるケースも多い疾患です。
※特に乳児や高齢者では注意が必要です。
▶症状の経過
発熱や咳・鼻水がでて2-4日で解熱しますが、熱が下がったあとに咳が強くなるのはよくある経過です。咳は長引きやすく、1〜2週間かけてゆっくり改善していきます。呼吸が苦しそう、ゼーゼーする、元気がない場合は受診が必要です。熱の有無にかかわらず、呼吸の苦しそうな症状に注意してください。特に1歳未満では悪化しやすい傾向にあります。
治療
特効薬やワクチンはありません。治療は「対症療法」と「家庭でのケア」です。
- 解熱剤 (発熱がつらい場合に)
- 去痰薬 (鼻水や痰を緩和させる)
- 水分補給 (脱水防止)
- ステロイド吸入や内服 (呼吸状態が悪い場合、気管支への抗炎症作用を期待して使用)
hMPVは鼻汁・痰といった分泌物が非常に多くなるタイプの感染症です。入院になりやすいケースとしては、「細菌性肺炎の合併」「気管支喘息発作」「熱性けいれん」「水分がとれず、ぐったりしている」が多いです。そのような状態になった場合は、入院しての点滴や酸素投与などが必要になります。
お家でできるホームケア
- 鼻吸い 食事や水分摂取前、睡眠前などに行うとよいでしょう
- 加湿
- 抱っこや横向き 咳や鼻水で苦しい時には起き上がらせたり、横向きにすると少し呼吸が楽になります
- 水分補給 こまめな水分摂取で脱水を防ぎましょう
夜間眠れない、べこべこした呼吸、水分が取れないなどの症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。
<おまけ>なぜ大きな子や大人では診断されないのか?
ヒトメタニューモウイルスは感染力が強く、パパやママ、ご兄弟にも簡単にうつります。
ある程度免疫力のある方が感染すると、発熱もなく「長引く咳」「長引く風邪」として経過します。病院へ行くと「風邪ですね」と言われてしまいます。「こどもがhMPVだったし、検査してほしいのに!なんで?」と思われるかもしれませんが、実は検査されないには理由があるのです。
ヒトメタニューモウイルスの抗原検査は、外来では「6歳未満のお子さんで、かつ肺炎が強く疑われる状況」でしか健康保険が適用されません。大きな子や大人では、重症化するリスクが低く、治療も対症療法で変わらないため診断する意義が低いのです。
まとめ
ヒトメタニューモウイルス感染症(hMPV)は、乳幼児に多く見られる呼吸器感染症で、春先から初夏にかけて流行します。症状は風邪に似ていますが、重症化すると気管支炎や肺炎につながるため注意が必要です。
ワクチンや特効薬はなく、治療は対症療法が中心です。子どもの呼吸の状態や体調をよく観察し、異変を感じたら早めに医療機関を受診してください。
